こんにちは、小室暁です。今年の夏は本当に暑かったですが、朝夕はようやく涼しくなってまいりました。
大阪では半年間にわたって開催された万博が、あと少しで閉幕を迎えようとしています。少し寂しくなるとともに、秋は息つく間もなく、学会や来年の準備など、年末まであわただしくなりそうです。
皆さんは如何お過ごしでしょうか?
さて、九月といえば、二日祝日もあり、年によっては大型連休となる”シルバーウィーク”の週です。本年は、暦の関係でそういうわけにもならない方も多かったと思いますが、先週一週間は、私にとって「デジタルデンティストリーウィーク」と呼ぶにふさわしい、実り多い1週間となりました。
というのも、一週間の間に、デジタルデンチャー及び下顎吸着義歯、及びイントラオーラルスキャナーやフェイススキャンなど、様々な最新情報をインプットすることができたからです。
富山から山崎史晃先生をお迎えして
9月20日には、デジタル義歯のエキスパートである山崎史晃先生と、技工士さんをを当院にお迎えしました。実際の患者さんにご協力いただき、勤務医と一緒に上下顎の型取りや噛み合わせの採得を通じて、デジタル義歯の最新の方法や材料について学ぶことができました。
ここで改めて学んだのは、**「デジタルに置き換える前に、まず確実な型取りを丁寧に行うことが大切」**ということです。山崎先生は、従来の方法でも粘膜への吸着や安定性が非常に優れた義歯(下顎吸着義歯)を数多く作られてきました。その技術を土台に、デジタルはさらに精密に、確実に仕上げるための手段になるのです。また、先日のブログでもおつたえしたとおり、下顎吸着義歯、デジタル義歯は、当院の伝統である義歯理論とも融合できる理論ですので、当院も研鑽を続け、今後とも菅様に提供をしていきたい技術だと確信しました。
また、山崎先生や技工士さんと、当院メンバーもディスカッションをさせていただき、よりデジタル義歯にマッチしたデジタル機器(ハード、ソフト)の選定などについても多くの学びを得ることができました。
韓国での最新技術視察
翌日からは韓国へ渡り、私が副会長を拝命している臨床歯科CADCAM学会の仲間と一緒に最新のデジタルデンティストリーを視察しました。訪問したのは、インプラントで世界的に有名なオステム社、勢いのあるRay社、そして口腔内スキャナの大手メーカーMedit社。
特に印象的だったのは、Ray社の「フェイススキャナ」を活用した「5Dコンセプト」です。顔の形、歯並び、骨格のデータをすべて組み合わせて、患者さんの「デンタルアバター(デジタルの分身)」を作り上げる技術。これにより、治療前後のシミュレーションや歯・骨の分析が、今まで以上にわかりやすく、患者さんにも直感的に理解いただけるようになります。
さらにMedit社では、最新の口腔内スキャナについて詳しい説明とデモを体験できました。驚いたのはスキャンの正確さやスピードの向上だけでなく、付属するソフトウェアの充実ぶりです。AIを活用して詰め物やかぶせ物を設計できるほか、インプラント治療や矯正分析まで幅広く対応。さらに、患者さんへの歯磨き指導に使えるコンサルテーション機能まで備わっています。
さらに最近では、AIの進歩によりレントゲンから歯や骨を自動で抽出し、分析に役立てることも可能になりました。病変の一部をAIが検出してくれることもあり、診断や治療計画に大きな助けとなります。
これまで専門知識や経験が必要だった複雑な作業が、瞬時に処理できるようになったことは、まさに「革命的」だと感じます。
すべての機能を体験できたわけではありませんが、今後のデジタル歯科は「口腔内スキャナを基盤に、CTやフェイススキャナなどのデータを融合し、AIによって多様な治療を支える方向へ進んでいく」と強く感じました。当院でもこうした技術を積極的に取り入れ、診療の精度と効率をさらに高めていきたいと考えています。
また今回の研修や視察では、多くの仲間と懇親会の場を持つこともできました。普段の診療ではなかなか話せない実際の工夫や悩みを共有し、新しいアイディアを得ることができたのは大きな収穫です。やはり「顔を合わせての意見交換」から生まれる学びは大きく、これこそ現地に行って得られる一番のメリットだと実感しました。
今回得た学びを活かし、当院のデジタル臨床をさらに深めていきたいと考えています。特にフェイススキャナや口腔内スキャナについては、患者さんにどう役立つのかを、今後のブログで少しずつ具体的にご紹介していきます。今回の内容もすべてをお伝えできたわけではありませんので、折を見て、より詳しくご紹介していきたいと思います。どうぞ楽しみにしていてください。