新型コロナウィルスのオミクロン株による、感染拡大が続いている中、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 当院も、感染対策には、十分に留意しながら、これまで以上に、慎重に、医院運営を行う1月となりました。なかなか、コロナウィルスの感染症の収束が完全には見通せない中、ますます、歯科でも”健康”、をキーワードとした治療が求められてくると考えられます。
その中で、当院の”健康”をキーワードとした治療技術として非常に重要視しているのがセラミック治療、とりわけ、ここ数年進歩が著しいジルコニアを使用したセラミック治療です。我々が本格的にcadcam治療を取り組み始めた10年ほど前には、まだ、ジルコニアは非常に固いが、チョークのように白いので、なかなか見た目を重視する部分への治療には、単体で使用するのは難しい状態でした。
しかし、ここ数年でジルコニアの見た目は劇的に進歩し、今もまだ進歩し続けております。さらに知識をアップデートすべく、昨日、伴清治先生と言う、ジルコニア研究の第一人者で、愛知学院の教授級の先生による、プライベートのセミナーを受講させていただき、新しいジルコニアの進歩と、それを利用した製品について贅沢なレクチャーを受けて参りました。
ジルコニア粉末は、オーストラリアの砂漠で産出され、中国にて中間加工して、日本のメーカーにより、最終的に加工され、基本的な粉末状の製品が生産されます。その後、世界各地の製品メーカーにてその粉末を様々な方法にて加工して最終的な製品化されます。我々はそれを歯の形に削り出し、焼き上げて詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)にして、患者さんに装着するわけです。セミナーには、そのジルコニアの粉末の世界的供給メーカーの方や、その他のメーカーの方、 cadcamのフロントランナーの先生方も集まり非常に密度の濃い議論となりました。
ところで、各メーカーで、粉末ジルコニアを固め、製品化する過程で、各社色付けや、硬さの調整をするために工夫を凝らしています。基本的には、粉末の中の、イットリウムと言う物質の含有量が多いほど透明度が高くなりますが、柔らかくなるため、その配合を考えたり、エルビウムと言う物質を入れて、赤みをつけたりして、できるだけ天然の歯に近い色を出し、かつ硬いジルコニアの製品を作ろうと努力されています。
今回、伴先生が開発された製品は、ジルコニアの粉末を固める方法に非常に特殊な方法を使い、かつ、イットリウムの添加方法にも、特許技術を使い、これまで以上に透明度の高いジルコニアディスクを完成されました。これは、非常に透明度が高いため、ブリッジ等には使えませんが、詰め物には非常に適応性が高く、当院でもより美しいジルコニアの詰め物を作成するために導入していきたいと思っています。
このような新製品のレクチャー以外にも、ジルコニアが、保険治療で使われているレジン材料より、どのように優れているかについて、実験レベルで色々とお話を伺うことができました。特に、普段我々が食べている食品に使われている色素に、ジルコニアと、レジン材料を長い間つけた場合、どれだけ色素が侵入するかと言う実験を見せていただきましたが、レジンには、色素が真っ赤になる位浸漬しているのに対し、ジルコニア全く浸漬していないなど、明らかな違いが印象的でした。また、ジルコニアは硬い材料ですが、完璧に研磨していると、むしろ、我々が普段使用しているハイブリットセラミックや、ガラスセラミックよりも、噛み合わせの歯を削ってダメージを与えてしまう可能性が低い実験結果も示してくださり、我々のこれからのかぶせ物の材料選びに参考となりました。
レクチャーの後は、伴先生や、参加者と、情報交換する機会も十分に取ることができ非常に有意義な時間となりました。
今回導入するジルコニア材料の変化については、細かい部分では、患者さん間には、わかりにくいところもあるかと思いますが、地味ですが確実に前進しております。また、ジルコニア材料について、当院の知識は、日本ではトップレベルであると自負しております。当院では、本年も、セラミック材料についての研鑽を止めず、前進していきたいと思いますのでよろしくお願い申し上げます。
写真は、伴先生と、その時ご縁をいただいた先生との写真です。