
こんにちは。院長の小室暁です。
先週、タイのバンコクまで、矯正のインビザラインやイントラオーラルスキャナのアイテロを扱っているアラインテクノロジー社のAPACサミット2025に参加して参りました。
このサミットは、アジア太平洋地域の歯科医師・関係者が一堂に会し、Invisalign(インビザライン)をはじめとしたデジタル歯科の最新情報と臨床応用の知見を深める国際カンファレンスです。
アライナー矯正の進化だけではない!
アラインテクノロジーといえば、アライナー矯正「インビザライン」のパイオニア企業として有名ですが、今回のサミットではより広い視野でのデジタル歯科の展望が示されていました。
iTeroスキャナーの次世代アップデート
すでに当院でも導入済みのiTero(アイテロ)スキャナーの最新モデルluminaでは、
スキャンスピードのさらなる高速化:
これまでのスキャナーと違い、カメラの数を増やすことにより、一度に広い範囲のスキャンをできるようになりました
補綴設計ソフトウェアとのシームレス連携:
設計ソフトエグゾキャドとの連携がよりスムーズになっています。
Invisalignとインプラントの連携戦略
これまでアライナー矯正とインプラント治療を一括してシミュレーションして、患者さんに治療コンサルテーションすることは一つのソフトでは困難でした。しかし、ソフトフェアの進化によりCT、顔貌スキャンデータ、などもiTeroソフトフェアに取り込むことが可能となり、より患者さんの顔貌や骨の形も考慮した形で矯正や被せ物の設計シミュレーションができる時代となりました。
講演では
- アライナー治療中にインプラント部位を確保する戦略
- 治療後の咬合再構成を想定したセットアップ
- ガイドサージェリーとの連動
など、総合的な補綴治療計画の中でInvisalignが活用されるケーススタディも複数紹介されており、私自身、大変参考になりました。
顔貌スキャンとの融合:見た目を可視化する診療へ
iTeroスキャナーによる口腔内3Dデータと、3D顔貌データとの統合について詳しくお話しします。
この技術により、
- 歯並びや咬合の変化が顔貌にどう影響するかを事前にシミュレーション
- 補綴や矯正の治療計画を顔全体のバランスから逆算して立案
- 患者さん自身が「治療後の自分の見た目」を立体的に確認できるように
といった、これまでにないビジュアル重視の説明と診断サポートが実現します。
従来は模型やレントゲンだけでは伝えにくかった「変化のイメージ」や「治療ゴールの姿」が、
顔貌も含めて一つの画面上で確認できることで、患者さんの理解度と納得感が格段に向上します。
また、それぞれのデータの精度の向上や補綴の設計が細かくできる様になったため、シュミレーションを実際の治療完成に落とし込むことがちみつになりました。
特に矯正治療と補綴治療をまたがるケースや、スマイルライン・リップサポートを考慮した前歯部の補綴など、審美性を追求する治療においては極めて有効な技術であると再確認しました。
AIによるパノラマレントゲンの自動診断
さらに今回のサミットでは、AIを用いてパノラマX線画像から病変を自動検出するシステムの紹介もありました。
これは、最近各社が取り組んでいる「診断支援AI」の一環であり、すでに一部の地域では臨床応用の実証が始まっているそうです。
このAIは、以下のような所見を自動的に検出・マーキングし、診断支援を行います:
- う蝕や根尖病変の早期検出
- 埋伏歯や歯の欠損部位の自動把握
- 歯周病の骨の状態評価 など
また、このAIシステムはiTeroやInvisalignの診療フローとも統合が可能で、スキャンデータ・顔貌データ・レントゲン画像を組み合わせた「包括的な治療計画作成」がいよいよ実現段階に入りつつあります。
これは、特に
- 忙しい診療現場での見逃し防止
- 経過観察の客観的指標の蓄積
- 若手医師・多施設での均質な診断支援
といった点で大きなメリットを持ち、まさに「AIと人間の協働による質の高い歯科医療」が具体化しようとしていると感じました。
まとめ:医療DXの真の意義とは
今回のサミットを通して改めて感じたのは、「デジタル機器やAIは、歯科医師の技術と診断力を補完し、患者さんへの価値提供を最大化するツールである」という点です。
特に私たちが取り組むような、インプラントや補綴といった中〜高難度の治療にこそ、正確な情報共有や設計の再現性が求められるため、これらのテクノロジーは強力な武器となります。
最後に、今回は、多くの先生方と出会い、意見交換できました。常日頃からお世話にばっている先生方だけでなく、矯正関係の先生方とも新たに出会い、情報交換させていただくことで、知見が広がりました。
また、合間を縫って、バンコク市内の寺院を訪れたり、先生方とタイ料理を頂いたりしました。バンコクは、活気があります。
エネルギーを頂いて、今年後半またデジタルを中心にデジタル診療を推進してまいります!